災害が起きた場合には自分で自分の身を守ることが基本です。しかし、どのくらい危険が迫っているのかが判断できないときもあるでしょう。そこで、今回は避難指示や避難勧告など、災害時に出される情報の違いをはじめ、避難や災害に関する用語、実際に避難指示や避難勧告が出された場合にどうすれば良いかについて紹介します。日ごろから大切な自宅や家族の命を守るために必要な心構えをしておきましょう。
避難指示、避難勧告、避難準備それぞれの違いとは?
避難指示や避難勧告、避難準備・高齢者等避難開始は、災害対策基本法に基づいて市町村長が発表する情報です。
●避難指示(緊急)
避難指示は日本で出される避難情報のなかで最も拘束力が強く、緊急性の高いものです。災害が起きたときや災害により人的被害が拡大する可能性が非常に高い、と予測された場合に出されます。もし避難指示が発令された場合は、すぐに避難を始めましょう。避難指示は、「すぐ避難してください」という意味の重要な警報ではあるものの、避難指示、避難準備など類似した言葉があるため緊急性が伝わりにくいという問題点がありました。そのため、2016年に「避難指示」から「避難指示(緊急)」という表記に変更されています。
●避難勧告
避難勧告は、災害により被害に遭う可能性がある地域の住人に対して避難を促すための情報です。避難準備・高齢者等避難開始よりも危険度、緊急度が高まっている状況ですが、避難指示ほど切迫してはいません。避難指示が出されるのは、人的被害が発生する可能性が高まった場合です。そのため、避難勧告は「ぜひ避難をしよう」という意味だととらえ、積極的に避難をしましょう。
●避難準備・高齢者等避難開始
避難準備・高齢者等避難開始は、これから避難勧告や避難指示(緊急)が出される可能性のある災害発生時に発令されます。一般の人に対しては、避難の準備を始めることを呼びかけています。なお、「高齢者等」とは、高齢者はもちろん、小さな子供や障害のある人なども含みます。
避難準備・高齢者等避難開始は、2016年以前は単純に「避難準備情報」という名称でした。2016年の台風第10号では、岩手県岩泉町にあるグループホームの入居者が、近くの川が急激に増水した際に逃げ遅れて亡くなりました。そこで、高齢者などが避難を始めるべきだと明らかにするため「高齢者等避難開始」という表現が追加されました。
参考:内閣府「避難勧告等に関するガイドラインの改定(平成29年1月31日)」
http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/hinanjumbijoho/index.html
知っておきたい避難・災害に関する基本用語
避難や災害に関する用語のうち、代表的なものについて紹介します。
●警戒区域の設定
警戒区域は実際に災害が起きた地域や、土砂災害へのおそれがある地域に発令されます。特に土砂災害の危険性が高い場合は、単なる「警戒区域」ではなく「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」などに指定されることもあります。
警戒区域に設定されると、災害普及に従事する作業員など関係者以外は警戒地域に立ち入り不可です。警戒区域は避難命令ではありませんが、罰則規定があり従わなければなりません。なお、同様の発令に「立ち入り禁止」や「退去命令」などがあります。
●近隣の安全な場所・屋内安全確保
災害が発生した場合、避難場所に移動するのが原則です。近隣の安全な場所や屋内安全確保は、指定避難所に行けない事情がある際に行くべき場所のことです。
・近隣の安全な場所:指定された緊急避難場所以外のより安全な場所や建物
・屋内安全確保:今いる建物の中でより安全な場所
●ハザードマップ
ハザードマップは過去に災害状況などをもとに洪水、土砂災害、津波、道路災害などの被害の範囲を予測し、地図上に表示したものです。国土交通省ハザードマップポータルサイトで確認できるので、自宅を構える際は一度確認しておくとよいでしょう。過去に災害の発生した地点や被害の状況をはじめ避難経路、避難場所なども確認できます。なお、ハザードマップは洪水ハザードマップ、土砂災害ハザードマップなどのように災害の種類別に作られています。
参考:国土交通省「国土交通省ハザードマップポータルサイト」
避難指示や避難勧告が発令されたら?
災害時の対応は、内閣府の情報を参考に各自治体でガイドラインを定めています。実際に災害が起きているときは、ガイドラインに基づき避難情報や避難行動指示が出されるのが一般的です。
●いつ避難するべきか
各自治体から避難指示や避難勧告が出された場合は、その情報に従って避難を始めます。テレビ、ラジオ、防災行政無線、緊急速報、メールなどで指示されるため、あらかじめ情報を知る方法を確かめておきましょう。なお、避難準備・高齢者等避難開始が出されたあとは、避難勧告や避難指示になるまでどのくらい余裕があるのかわかりません。そのため、避難をするのに時間がかかる人は「避難準備・高齢者等避難開始」の段階で、避難の準備を始めましょう。
●どこに避難するべきか
災害時は公園や学校などの指定避難場所へ移動するのが原則です。避難指示、避難勧告といった情報に則って、早めの避難を心掛けましょう。ただし、立ち退き避難を求められる場合でも、避難所がすでに災害に巻き込まれている場合や外出自体が危険な場合には、無理に避難所へ行かなくても大丈夫です。その場合は、近隣の安全な場所や家の中で安全確保をします。土砂災害の恐れがある場合は、山とは反対側の部屋などできるだけ土砂から離れ、洪水の恐れがある場合はできるだけ高い建物の上層階や高いところなどに避難しましょう。
災害時は避難指示や避難勧告の情報に注意しよう
災害発生時は自治体から出される避難指示や避難勧告を確認し、自分で自分の身を守るようにしましょう。特に高齢者などは早めの避難が必要です。なお、災害の起こりやすい場所は国土交通省が公開するハザードマップで確認できます。自宅がどのような災害に巻き込まれる恐れがあるか確かめておくのがおすすめです。