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令和6年能登半島地震 被害調査報告
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能登半島地震による建物被害の要因は?

このたびの令和6年能登半島地震で被災された皆様、ならびにご家族、ご関係者の皆様には謹んでお見舞いを申し上げます。
被災地におかれましては、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

ジャパンホームシールドでは、2024年1月1日に発生した能登半島地震における被害状況の現地調査を行った。
地震による被害状況の中から、今回の地震で特徴的だった「液状化被害(再液状化)」「人工地盤」「側方流動」について解説する。

地震概要

日  時 2024年1月1日 16時10分
震  央 能登半島北東部
震源深さ およそ16㎞
地震規模 マグニチュード7.6
最大震度 7
発震機構 逆断層型地殻内地震

 

調査エリア

新潟県  新潟県 新潟市中央区・西区・江南区、上越市、糸魚川市
富山県 富山県 富山市、高岡市、氷見市
石川県 石川県 金沢市、かほく市、河北郡内灘、(※本誌では下線部のエリアを掲載)

調査エリアは震度5強の揺れを観測

P2_zu1

地形地質概要

日本海沿岸の砂浜海岸付近を対象に調査実施。海岸砂丘が発達し、その内側に旧河道(※)や湿地が分布する平野部。
海岸砂丘は季節風や潮流により形成され、地質は均質で締まった砂。大きなところでは標高50m近い砂丘もある。

※河道(かどう):川の流れ下る部分で堤防や堤防に挟まれた区間

 

P2_zu3

出典:国土地理院 地理院地図に加筆

■長周期地震動

長周期地震動はゆっくりとした揺れが遠方までエネルギーを失わずに伝わる震動。
調査エリアの長周期地震動は階級3(下表)。今回の被害エリアが震源地の石川だけでなく富山、新潟と広がったのは地震の規模が大きかったことに加え、この長周期地震動が起こったことが理由と考えられる。

 

長周期地震動階級関連解説表
(高層ビルにおける人の体感・行動、室内の状況との関連)

P2_zu2

KEYWORD 01 再液状化

液状化は、石川・富山・新潟と日本海沿岸部などの広いエリアで被害が発生している。
1964年の新潟地震で液状化現象の被害が大きかった新潟市中央区川岸町は、再液状化が発生したと考えられる。

■基本的な液状化現象の発生メカニズム

緩い砂地盤・浅い地下水位・長く強い地震動の条件がそろうと液状化は発生

液状化

 

■今回の地震で再液状化の現象が起こった新潟県中央区川岸町

信濃川の旧河道で液状化被害が多数発生。
ここは1964年の新潟地震の際に大規模な液状化現象が発生した場所だった。

P3_写真(沈下・傾斜)

今回の地震による家屋の沈下・傾斜(新潟市中央区川岸町)

P3_1969年新潟地震

1964年新潟地震(新潟市中央区川岸町)  出典:国立公文書

■SDS試験による液状化判定(新潟市中央区川岸町/旧河道)

液状化層の層厚は平均5.6mで危険度判定はBとCという結果だった。

SDS調査機イラスト背景透過

SDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)

 

P3_液状化判定

 

POINT ① 液状化履歴のある土地は調査結果からも再液状化の可能性が高い
② 地盤調査による液状化危険度判定で被害の予測は可

 

KEYWORD 02 人工地盤

今回の液状化被害が起きたエリアで多かった地形は、砂丘や堤間湿地、河道を造成した人工地盤だった。特に被害の大きかった、旧河道に砂を盛土した地盤の新潟県港南区と砂丘を削った地盤の石川県内灘町をピックアップした.

■新潟市港南区 

新潟市港南区は信濃川の旧河道に砂を盛土した地盤で、震度5弱であったが盛土の地下水位が浅く、「砂+浅い地下水位」という液状化の発生条件がそろった。

P4_新潟県港南区

 

■石川県内灘町

石川県内灘町は砂丘を削った地盤で甚大な被害があり、こちらも液状化の発生条件がそろってしまった

P4_写真(人工地盤)

内灘町の実際の被害の様子

P4_写真1

砂丘の切土面。手前の建築物と比較すると規模が大きいことがわかる(出典:飯田淳一(平成15年)「干拓の記」 

P4_写真2

標高50mの砂丘から大量に砂が削られる様子

 

■液状化マップ

石川県内灘町を液状化マップで確認したところ、液状化の危険度は5段階のうち3を示しており、大まかな地形区分でつくられた液状化マップでは把握できないエリアもあることがわかった。

P4_液状化マップekijouka

液状化被害の様子

POINT ① 旧河道や切土など、地下水位が浅くなる造成地は注意が必要
② 液状化マップは人工地盤を全て表現しないので注意が必要

 

KEYWORD 03 側方(そくほう)流動

傾斜地などで液状化現象が発生し、表層地盤が水平方向に変位する現象で、流動した地盤上の構造物(住宅など)への被害が大きくなる。石川県内灘町では内灘砂丘付近で液状化現象による側方流動が発生した。

P5_側方流動の模式図

 

■側方流動の一例

石川県内灘町は、地割れ、側溝の浮き上がり等被害は甚大

P5_写真1

側方流動の押し出しで変形した参道

 

P5_写真2(1)

広範囲な側方流動による地割れ

■液状化現象により側方流動が誘発集落の地盤が大きく変形

内灘砂丘は砂丘を切土したことで、傾斜地+液状化という条件がそろい側方流動が発生した

P5_内灘砂丘の側方流動模式図

 

POINT ① 斜面地は地下水位が浅く、液状化による側方流動に注意が必要
② 側方流動は地表面の変位が大きく家屋などの被害が拡大

 

まとめ

・人工地盤で液状化現象が発生しやすい
・良好な地形条件でも人工改変によって液状化現象が発生しやすくなる
・緩傾斜地では液状化現象による側方流動で被害が拡大

液状化現象の発生は地震による外力(震度)の違いや地形・地質・地下水位といった地盤条件の違いにより異なります。まずは自分の地域がどんな地盤条件なのかを知ることが重要です。液状化マップは液状化の可能性を大きな面で表しているため目安として利用しましょう。詳細な地盤データがわかる液状化調査を行い、宅地ごとに液状化被害の可能性を知ることが大切です。JHSでは地盤品質判定士などの専門家が多数在籍しておりますので、お困りの際にはご相談ください。

 

液状化被害の可能性を知る液状化調査はこちら

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