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粘土といえば、学校で使った工作用粘土や、水田の粘土を思い浮かべるでしょう。本来の粘土は細かく分類されるのですが、難しい分析方法を用いますので、今回は簡単に見分けられる「色」を使って粘土を見ていきましょう。

1 黒い粘土

写真1 嬬恋村の畑

黒い粘土は肥沃で農業に適していると一般には言われます。浅間山の北に位置する群馬県嬬恋村の野菜畑(写真1)は全体的に黒い粘土でできていて、家庭の植木鉢などに入れるための園芸用の土も、概ね黒い色をしています。この黒は有機物の色。具体的には、その土地に生えていた草や木々が枯れて腐敗したもので、化学的には炭素を中心とした、炭素が二重結合することで強く結合し、光を吸収するため黒く見えます。これを「腐植」と言います。前述で黒い粘土は肥沃と書きましたが、実はこれは正確な表現ではありません。日本の黒い粘土は火山灰と中国大陸から飛来したレス(黄土)が混ざって風化したものが母材。そして火山灰には鉄・アルミニウムといった科学的に吸着性の高い物質が含まれています。これだけ聞くと肥沃な粘土に思えるのですが、困ったことに吸着性の高い物質は腐植だけでなく植物の生育に必要なリンなど他の栄養も吸着させてしまいます。その結果、せっかくの栄養分を植物が吸い取ることができず、黒い粘土はやせた土になるのです。日本人はこの黒い粘土を農業に適したものにするため、水路を開削したり肥料を施すなど、長年の土壌改良を重ねることで、現在の農地を完成させたのです。

2 赤い粘土

写真2 赤い粘土

太陽系の火星が赤い光を放っているのは、太陽光が赤い土の色を反射しているからです。この赤色は岩石の中に含まれる鉄分が酸化してできた鉄錆びの色。これと同様に現在の地球上でも赤い土が作られています。鉄を含む岩石が粉々に砕け、空気と触れる表面積が増えると酸素によって酸化が進行。その結果、野ざらしにされた鉄製の機械などと同様に土も赤錆びだらけになります。

日本の赤い粘土(写真2)は、火山に関係しています。火山が噴火することで地球の内部にあった鉄が地表に現れます。そして火山灰として地表を覆い、風化によって酸化されると赤錆び状態の粘土が出現します。関東ロームに代表される風化火山灰質粘土がこれにあたります。

3 灰色の粘土

写真3 強く青みのかかった灰色の粘土

最も馴染みのある水田の粘土は、灰色です。先ほど赤い粘土は空気に触れて酸化するので赤くなると説明しましたが、今度は逆に空気に触れない粘土の話になります。

水田は春になると水を引き入れてプールのようになります。このとき水田の中の粘土は水没してしまい空気に触れることができなくなります。時間が経つに従って地中の微生物により酸素が消費されるため、どんどん酸素がなくなっていきます。その結果、地中は著しい酸欠状態になり、この過程で粘土も酸素を失います。これを「還元状態」と言います。還元は酸化とは反対の化学反応です。この還元状態の粘土は土の中に含まれる鉄イオンによって灰色になることで生じます。極端な還元状態の場合、青色に変色することもあります(写真3)。

4 白い粘土

写真4 白い粘土が採掘できる多治見の採土場

前述の3色の粘土は地表近くで、何らかの化学変化を起こして色がついています。ところが白い粘土は、火山の噴火に伴って流下した火砕流などが固まってできた岩が白いことからそう見えるのです。

火山が噴出する火成岩は二酸化ケイ素(SiO4)の量が多いほど白い成分が増えていきます。特に二酸化ケイ素が66%以上含まれる流紋岩や花崗岩は石英やカリ長石といった無色の鉱物が多いので白い部分が目立ちます。こうした岩石の主成分が火砕流で火山の裾にある河川に沿って流下していき、地形的にお盆のようになった場所に達すると流れが滞るため溜まり始めます。

こうした場所にはもともと湖があり、そこに火砕流が沈殿し、キメの細かい白い地層が、できあがります。陶芸用粘土の産地である恵那・多治見・瀬戸などの地域はおおそ300万~500万年ほど前に巨大な湖があったと考えられています。湖の静かな水域に大量の良質な粘土が堆積することで陶芸に必要な粘土が得られる場所になったというわけです(写真4)。

5 緑色の粘土

写真5 緑色の粘土が混ざった湖

プレートの押し合いによって地質構造が大変複雑になっている日本列島には、2種類の緑色をした岩石が存在します。一つはプレートの沈み込みによって非常に高い圧力が加えられ、岩石が緑色になった変成岩。各地で庭石の名産地になっていて、群馬県の三波石は天然記念物に。和歌山県の紀州青石、徳島県の阿波青石、愛媛県の伊予青石などは同じ種類の岩石です。この岩石が侵食や風化で砕けて 山から河川などに落ちると分解 されて水の色を緑色に変えます(写真5)。こうした場所では緑色の粘土が流れの弱い場所で再堆積していると考えられます。

もう一つは、海底火山が噴火した際に火山灰が水と触れることで化学変化し緑色になって堆積した岩石で、緑色凝灰岩(グリーンタフ)と呼ばれます。東宮地域にかけて分布し、西日本は島根県の島根半島など海沿いで見られます。栃木県の緑色凝灰岩は大谷石という名前で有名で庭の塀などでよく利用される石材です。これからも山地の河川水を緑色にする粘土が生じています。

色に着目して粘土を紹介しましたが、実際には粘土は様々な分野で利用・研究されていて、見る人によって特徴の捉え方は異なります。また、他にも国内外には粘土がたくさんあります。旅行におでかけになるときなど、水田や山の崖、川の色などをぜひ見てみてください。様々な色の粘土が見られるかもしれません。

 

●参考文献

1.藤井一至(2018)土 地球最後のナゾ100億人を養う土壌を求めて 光文社新書,132.p
2.松中照夫(2003),土壌学の基礎)農山漁村文化協会,28.p
3.浜島書店編集部(2012)ニューステージ新地学図表,浜島書店,17.p
4.町田ほか(2006)日本の地形5中部,東京大学出版会,324.p

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