地震によって引き起こされる「液状化」リスクは深刻です。地下水位が高く地盤の弱い土地で震度5を超えるような強い揺れが起これば液状化現象が発生することがあり、地盤沈下や建築物の倒壊のリスクを招いてしまうことがあります。
そこで今回は、液状化対策の第一歩となる液状化判定の方法や、液状化判定するメリットをご紹介します。ぜひ住居や土地選びの判断材料にお役立てください。
液状化とは?
地震の大きな揺れを受けて地面が液体状になる現象が「液状化」です。
液状化によって強度を失った地盤は、建物の沈下や傾斜を招く危険性があります。液状化は地下水位が高く、土質は砂で構成されていて、緩いという条件が揃った地盤が強い地震動を受けると発生しやすくなります。
一度液状化が起きてしまうと戸建住宅などは大きく傾いたり地中に沈み込んだりすることで損傷を受け、復旧するまでに大きな費用と時間がかかることになってしまいます。
2011年の東日本大震災では、千葉県浦安市など多くの埋立地で液状化現象が見られました。
2024年の能登半島地震では、石川県・新潟県・富山県・福井県など広い範囲で液状化現象が見られました。
液状化のメカニズム
通常、地盤は土粒子同士が結びついていて、土粒子の隙間にある水も安定が保たれています。しかし、地震が発生して同じ大きさの土粒子からなる土が繰り返し振動を受けると、土粒子間の水圧が急激に上昇し、土粒子の結びつきがバラバラになります。その結果、土粒子同士が離れて液体状になることで強度を失い、地盤の沈下を引き起こします。
液状化しやすい地盤は?
元々河川や沼地だった場所、または造成された人工地盤(埋立地、干拓、盛土など)は山地や丘陵地、台地より地盤が緩く、液状化しやすい土地です。また、土粒子の結びつきが弱い沖積低地の砂質地盤も、元々の地下水位が高く、高い液状化リスクが認められます。
「建築基礎構造設計指針(日本建築学会)」では、液状化判定を行う必要がある土層について以下のように定めています。
- 20m程度以浅の沖積飽和土層
- 地表面から20m以浅である
- 細粒分含有率が35%以下
- 粘土分含有率が10%以下、または塑性指数が15以下の埋立あるいは盛土地盤
土地の液状化を防止するためには、土地の造成や建築の前にしっかりと地盤の性質を調べることが重要です。
地形区分から調べる
国土交通省は地形区分による相対的な液状化リスクを以下のようにまとめています。
液状化発生傾向の強弱 | 地形分類 |
---|---|
5(強) | 埋立地、砂丘末端緩斜面、砂丘・砂州間低地、旧河道・旧池沼 |
4 | 干拓地、自然堤防、三角州・海岸低地 |
3 | 砂州・砂礫洲、後背湿地、扇状地(傾斜<1/100)、谷底低地(傾斜<1/100)、河原(傾斜<1/100) |
2 | 砂丘(末端緩斜面以外)、扇状地(傾斜≧1/100)、谷底低地(傾斜≧1/100)、河原(傾斜≧1/100) |
1(弱) | 山地、山麓地、丘陵、火山地、火山山麓地、火山性丘陵、岩石台地、砂礫質台地、火山灰台地、礫・岩礁 |
(注意 : 水部(河道、湖沼)については、陸部がないことから液状化の発生傾向を評価しない。)
出典:国土交通省「地形区分に基づく液状化の発生傾向」より一部改変
ただし、上記の表は盛土造成地等の人工改変地は考慮されていないことに注意が必要です。より局所的なリスクを推測する場合は、次の項目でご紹介するハザードマップを利用してみましょう。
ハザードマップで調べる
自治体によっては、液状化する可能性があるエリアをマップでまとめています。このマップを確認することで、住んでいる地域または住宅を建てる予定の地域の地盤特性や液状化の危険性を調べることができます。
また全国規模でも液状化する可能性を「国土交通省ハザードマップポータルサイト」で調べることができます。このサイトは全国のハザードマップがまとめられた情報サイトとなります。
東京では、東京都都市整備局の「建物における液状化対策ポータルサイト」が便利です。東京都の地盤特性や液状化の危険性、液状化に関する基礎知識などが分かるようになっています。
一度「東京の液状化予測図」を開いてみましょう。液状化の危険度は、表層砂層のFL値(液状化に対する抵抗率)とPL値(地盤の液状化指数)の両方の値から判定されています。液状化の危険エリアはピンクとして表示されていて、とても見やすい点が特徴です。
民間の企業でも液状化の可能性がわかるマップを公開しています。スマホでも対応しているマップがあるので、簡単に知りたい土地を調べることが可能です。
このような資料で、取得したい物件のエリアが液状化リスクを抱えているかどうかを調べておきましょう。
液状化判定の必要性
リスクを把握するだけでなく、安全な住宅を設計する上でも液状化判定は重要です。地盤強度の調査や計算方法について国土交通省から発出された告示では、以下のように液状化リスクを考慮することを定めています。
第二 地盤の許容応力度を定める方法は、次の表の項、項又は項に掲げる式によるものとする。ただし、液状化のおそれのある地盤の場合にあっては、平成十二年建設省告示第千三百四十七号第二に定める構造計算を行う場合に限り使用できるものとする。
構造計算の精度を高めるためには、地盤の状態を正確に把握する必要があります。液状化判定は、住宅の安全性を高めるためにも重要といえるでしょう。
液状化判定の流れと方法
住宅を建てる前に液状化判定を実施して液状化のリスクを把握しておけば、液状化被害の未然防止に繋がります。液状化判定には2段階あり、まずは地形図をもとに液状化リスクを判定し、詳細な調査が必要と判断された場合はボーリング調査等で詳細に調べます。
【一次判定】液状化のリスクがあるか判定する
まずは一次判定として、液状化リスクを新・旧地形図、地盤データベースなどの既存資料から判断します。大地震が発生した際に被害が生じる可能性がある場合は、ボーリング調査等による二次判定に進みます。
【二次判定】当該地での調査により液状化判定を行う
液状化リスクを正しく把握するには、当該地の土質と地下水位の詳しい調査が必要です。
たとえば、粘土質の地盤や砂利のような地盤は液状化リスクが低い一方で、細かな砂で構成された地盤は液状化の可能性がある地盤です。
上記のような砂地盤において、地下水の深度が高い場合、液状化を招く危険性は極めて高いといえるでしょう。
調査方法は、大別するとボーリングによる調査で詳細に調べる方法と、費用を抑えて簡易的に調べる方法の2つがあります。
ボーリング調査(標準貫入試験)によって詳細に調べる
ボーリング・標準貫入試験により、土の種類や地下水位の深度、地盤の硬軟や粒径・粒度分布、締まり具合などを詳細に判定します。
ボーリング調査で得られる様々な値を使って計算することにより、液状化の判定が可能です。
液状化の判定計算には、以下のような方法があります。
- N値(土の締り具合や強度を表す数値)と採取した土の土質試験で判定する
- FL法:FL値(液状化に対する抵抗率。安全率とも言う)を求める方法。液状化強度比と地表最大加速度(※)などから計算した繰返しせん断応力比を比較して導き出す
- PL値(液状化指標値)を算出する方法。PL値とは地盤の液状化の危険度の程度を表す指標。
FL値から算出できる非液状化層厚(H1)、地表変位量(Dcy値)、液状化指標値(PL値)を使えば、顕著な液状化被害の可能性も判定できます。PL値による液状化危険度判定区分は、地域の防災計画等による液状化危険度マップなどに使われます。他にも、FL値は土質定数の低減係数 を求める際にも用いられます。
宅地における液状化の調査方法や計算方法などは、「建築基礎構造設計指針(日本建築学会)」に記載があり、その指針に基づいて計算されるのが一般的です。他にも橋や高架の道路等に関する技術基準を記載した「道路橋示方書」や港湾、鉄道用の液状化判定方法など、施設の性質に応じた基準が定められています。なお、ボーリング調査は液状化のリスクを正確に判定できる一方で、費用や時間がかかるというデメリットもあります。そのため、費用を抑えて簡易的に液状化のリスクを調べる方法も出てきました。
※加速度(gal):地震の揺れの強さを表す単位。中地震の場合は加速度 150~200gal(マグニチュード5~7レベル)、大地震の場合は加速度 350gal(マグニチュード7レベル以上)といった値が用いられます。
費用を抑えて簡易的に調べる
簡易的な液状化判定であれば、調査費用を抑えることができます。
液状化の可能性のある層の土を採取し、細粒分含有率試験などの粒度試験によって調べ、地下水位の観測結果と合わせて地震発生時の液状化リスクを判定します。
その他にも、スクリュードライバーサウンディング試験(以下、SDS試験)という方法も採用されています。SDS試験では、深さの方向に対して連続して砂質土・粘性土といった土質を判別することが可能となり、併せて地下水位測定を行うことで比較的精度良く、短期間で液状化判定を行う方法として有効です。
液状化による被害を防ぐためには?
液状化による被害を防ぐためには、液状化した場合の被害がどの程度なのかを想定しておくことが重要です。大きな被害が出ると想定される場合は、そもそもその住宅や土地を手に入れるのは控えることも視野に入れなければなりません。
液状化した場合の被害想定をあらかじめ知っておく
液状化による被害が想定できれば、事前に対策が打てます。被害の想定については、各都道府県の「地震被害想定調査結果」で確認可能です。
他にも、内閣府ホームページで公開されている「都道府県別地震被害想定概要集」で各地域の被害想定が確認できます。このサイトでは、地域ごとの液状化による建物被害の想定数値が記載されていますので確認してみてください。
参考:内閣府「国の業務継続計画」
各種マップを用いての液状化のリスクと被害想定を調査し、リスクが高い場合はボーリング調査やSDS調査等で液状化判定してもらうことをおすすめします。
判定後の液状化対策
ボーリング調査やSDS調査等の液状化判定の結果、液状化リスクが認められる場合は、液状化対策工事などの事前の対策が望まれます。液状化対策のために行う地盤補強工事の工法にはいくつかの種類がありますので順番に解説します。
- 浅層混合処理工法(表層地盤改良)
- 深層混合処理工法(柱状地盤改良)
- 小口径杭工法
- CDP工法
浅層混合処理工法(表層地盤改良)
土地の液状化を防ぐためには、地盤をしっかり締め固め、変形を起こしにくくする方法が有効です。浅層混合処理工法は、固化材(主にセメント系)を使って元々の地盤の土と混ぜ合わせ、締め固めて変形を起こしにくくする工法です。地盤改良できる深さはおおよそ2メートルまでになります。地下水位が高い場合やもっと深い部分まで地盤改良が必要な場合、他の工法を選ぶことになります。
深層混合処理工法(柱状地盤改良)
液状化リスクの低い層まで円柱状に地盤改良をすることで、地盤の変形を抑えて建物荷重を支える力を増し、沈下量を低減します。この工法は施工可能深度が8m程度のため、そこまでに締まった地盤が出現しないと採用できませんので、注意が必要です。
小口径杭工法
堅固な支持層まで杭(RC杭・鋼管杭)を打ち込むことで建物の沈下量を低減します。この工法は、深さ15mぐらいまでに固い地盤がある場合におすすめですが、それより深い場所にしか固い地盤が出てこない場合は、費用が高額になるため、採用には注意が必要です。
CDP工法
地盤の密度を増大させることにより液状化の発生そのものを抑制するCDP工法があります。このCDP工法は、強化したい地盤にケーシングと呼ばれるパイプを貫入してそこに砕石を詰め、ケーシングを引き上げながら30cmごとに砕石を締固め、地盤を改良する工法です。
この工法では、パイプを埋め込む時にも土を取り除かないため、パイプを貫入した周囲の地盤も圧力がかかって締まります。砕石を30cmごとに埋め固めることで地盤は強化された状態になる点が特徴です。
高精度な液状化判定を実施する調査会社
ジャパンホームシールドは、地盤実績No.1といわれる地盤の調査・解析・対策をトータルに提供する地盤調査会社です。液状化判定では、建築のプロから選ばれるほどの精度の高い調査・解析を実施しています。
ジャパンホームシールドが実施する液状化判定は、「ボーリング調査」や「SDS試験を利用した簡易液状化判定」です。正確な調査により得られたデータは詳細に解析され、公正な結果として提供されます。
高精度な液状化判定を実施することで、データに基づいた安全な居住環境を確保できるようになるでしょう。
液状化調査についてはこちら
おわりに
今回は、液状化対策の第一歩となる液状化判定の方法や、液状化判定するメリットをご紹介しました。
旧河道や埋めたて後の造成地は地盤が緩く、地震発生後に液状化が起こりやすいです。液状化による被害を防止するためには、事前に調査・判定して地盤の性質を見極める必要があります。
仮に液状化判定によってリスクが確認されたとしても、データに基づいて適切な液状化対策工事を行えば建物の傾倒や地盤沈下をある程度防ぐ対策は可能です。正確な液状化判定は、建物の耐震設計を行う上でも非常に重要です。住宅購入や建築の前には、液状化のリスクをハザードマップで調べ、さらに建築地の液状化判定を実施して、不測の事態に備えるようにしてください。