全体の概略
今回の法改正で大事なことは、不動産会社(宅地建物取引事業者様)が中古住宅の売買を仲介するときに、中古住宅を売買するお客様に対して「建物状況調査」の制度の説明と、希望に応じた斡旋(あっせん)を行う必要があるということです。きちんとご理解頂けていないと最悪の場合、業法違反などにもつながる恐れがありますのでぜひこの機会にご理解ください。
建物状況調査とは、どんな検査?
A:専門知識を持つプロの検査員が建物の基礎・外壁などにひび割れや破損、雨漏りしないかなど建物の劣化状況を、目視および計測等による非破壊検査にて詳細を確認します。検査対象となるのは、既存住宅状況調査方法基準(平成29年国土交通省告示82号)に基づき、基礎・外壁など「構造耐力上主要な部分」と、天井ほかの「雨水の侵入を防止する部分」、および給排水管路です。(※給排水管路検査はオプション)
目視検査なので、外から見えない劣化や不具合を把握し、住宅の性能を判定するものではないので注意が必要です。
専門家による目視検査を行うことにより中古住宅の劣化状況を把握できた上で売買等の不動産取引を行うことができるので、購入後の補修費用のトラブルのリスクヘッジになるというメリットがあるほか、リフォーム・メンテナンスの計画に活用できるという一面もあります。なお、建物状況調査の結果、一定の基準を満たす場合には「既存住宅売買かし保険」に加入することができます。調査時間は既存住宅の種類や規模にもよりますが約2〜3時間程度で、現在居住中の住宅でも実施することは可能です。
建物状況調査が、なぜ必要なのか?
「住宅の品質を知りたい」というニーズは、中古住宅を売買される方に強くあるものと考えられます。実際に、一般社団法人全国住宅技術品質協会が2017年5月におこなったアンケート調査でも、売主の66.0%、買主にいたっては83.2%の方が、売買契約をした後で「欠陥住宅と判明することが怖い」と答えています。スムーズでトラブルのない中古住宅の売買取引のために、住宅の現状を事前に検査し品質を把握する建物状況調査をお勧めします。
中古住宅の取引がさかんなアメリカ・ヨーロッパでは、不動産を売却・購入する前に専門家が調査をすることは当たり前。日本でも、大手不動産会社などは徐々にこのサービスを一般化させており、中には検査費用を自社で負担し、売主へサービスとして提供する会社も増えています。
宅建業法改正の背景とは?
今回の改正は、日本の中古住宅取引を活性化させるため、2016年に国会で決定されました。日本の住宅流通は、新築が大きなウェイトを占めています。中古住宅のシェアは、2013年の統計によるとわずか14.7%。
なぜ、中古住宅の取引が日本で活発にならないのでしょうか。「新しいもの・初物」好きの日本人の思考は新築が好き、という観念的な理由もありますが、中古住宅は「隠れた不具合が心配」「耐震性や断熱性など品質が低そう」(※)など、現状の品質がわからないことが、購入のネックになっていると思われます。この不安を、建物状況調査を実施することで解消し、中古住宅取引の増加を目指すものです。
(※新築住宅取得者に対するアンケート内の回答 出典:平成26年住宅市場動向調査(国土交通省))
宅建業法改正・最大のポイントとは?
2018年4月に行われた宅地建物取引業法(以下、宅建業法)の最大の改正ポイントは、既存住宅市場の取引活性化を狙い、既存住宅の仲介において「建物状況調査」の告知・斡旋が義務化されたことです。
実際の条文では、第34条の2、第1項第4号において、媒介契約書に「当該建物が既存の建物(中古住宅のことです)であるときは、依頼者に対する建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項」を記載することが定められました。
対象となる住宅は、築年数を問わず、「既存住宅」のみ。戸建住宅・分譲マンションはもちろん、賃貸住宅(収益物件の売買)も含みます。アパート一棟売・マンション一棟売も対象となります。業務を行う上で、以下3つのタイミングで建物状況調査についての説明義務が発生します。 必ずしも、建物状況調査の実施自体は義務ではありませんが、制度の内容と意義の説明は必須となります。
1:媒介契約時に、売主・買主それぞれに建物状況調査の制度概要を説明し、希望に応じて検査業者を斡旋すること。
2:重要事項説明時に、買主に建物状況調査の結果を重要事項として説明すること。実施の有無と、実施した場合は検査概要を説明します。
3: 売買契約成立時に、建物の状況について売主・買主の当事者双方が確認した事項を記載した書面を交付すること。重要事項説明書・契約書における説明・記載事項の追加がこれに当たります。
本連載では、業務を行うにあたり重要なポイントを解説していきます。間違った認識で業務を進めると最悪の場合、宅建業法違反につながる恐れがありますので、ぜひこの機会にご理解いただければと思います。
調査会社を選ぶポイントとは?
斡旋するにあたり、お客様に安心して紹介できる信頼できる調査会社の選定が重要です。
建物状況調査を行う調査会社を選ぶにあたり、大事なポイントは以下の3つ。
資格をもつプロの建築士が検査員であること
業法の対象となる建物状況調査は、一定の講習を受け、資格を持った「建築士(既存住宅状況調査技術者)」のみが行えるもの。民間資格のみの検査員や調査会社を紹介しても、斡旋をしたことにはなりませんので、斡旋する会社の検査員の資格等にご注意ください。
検査結果報告書の充実
検査会社によっては、報告書が簡易なものや、どの箇所が劣化しているのか調査内容の詳細が記載されていないなど、きちんとした報告書を出していないケースも。業法で求められる「結果の概要書」もオプションとして別料金となる会社もあるので、どのような報告書が手に入るか、検査前に必ず確認することをお勧めします。
「既存住宅かし保険」につながる検査なのか?
目視ではわからなかった雨漏りや、壁の中など見えない部分の腐食など「隠れた瑕疵」が保証対象となる「既存住宅かし保証保険」を利用するためには「建物状況調査」に加え、かし保険の適応検査が必要になります。調査後にかし保険に入りたいという要望がお客様から出た場合には、調査自体を一からやり直すことにもなりかねないので、お客様への事前の説明や調査会社へ事前確認が必要です。
次回以降は、よくあるトラブルや説明時などの注意事項をお伝えします。斡旋するにあたり、お客様に安心して紹介できる信頼できる調査会社の選定が重要です。
建物状況調査を行う調査会社を選ぶにあたり、大事なポイントは以下の3つ。
資格をもつプロの建築士が検査員であること
業法の対象となる建物状況調査は、一定の講習を受け、資格を持った「建築士(既存住宅状況調査技術者)」のみが行えるもの。民間資格のみの検査員や調査会社を紹介しても、斡旋をしたことにはなりませんので、斡旋する会社の検査員の資格等にご注意ください。
検査結果報告書の充実
検査会社によっては、報告書が簡易なものや、どの箇所が劣化しているのか調査内容の詳細が記載されていないなど、きちんとした報告書を出していないケースも。業法で求められる「結果の概要書」もオプションとして別料金となる会社もあるので、どのような報告書が手に入るか、検査前に必ず確認することをお勧めします。
「既存住宅かし保険」につながる検査なのか?
目視ではわからなかった雨漏りや、壁の中など見えない部分の腐食など「隠れた瑕疵」が保証対象となる「既存住宅かし保証保険」を利用するためには「建物状況調査」に加え、かし保険の適応検査が必要になります。調査後にかし保険に入りたいという要望がお客様から出た場合には、調査自体を一からやり直すことにもなりかねないので、お客様への事前の説明や調査会社へ事前確認が必要です。