霧島ジオパークには30㎞20㎞という広い範囲に自然の多様性とそれを育む火山活動を伝える44のジオサイト(地質的な見所)が存在します。今回は、霧島市、都城市、えびの市を霧島ジオパークの坂之上浩幸さんにご案内いただきました。
宮崎県と鹿児島県の県境に広がる20あまりの火山がある「霧島山」は、日本有数の活火山です。
「霧島」の名は、霧深い地域であることに由来し、遠方から眺めると、霧の海に浮かぶように見えるためという説もあります。
霧島山では、34万年前に現在のえびの市付近で起きた加久藤カルデラの大噴火後に、幾度となく噴火が繰り返されてきました。新燃岳やえびの高原、御鉢では、今もなお活発な火山活動が続いているので、注意が必要です(表1)。霧島山を含め、活火山は日本に111も存在するので、気象庁のホームページで最新情報を調べておくことをお勧めします。
一方で、火山は私たちにさまざまな恵みをもたらしてくれる存在でもあります。火山活動が作り出す霧島のダイナミックな景観、渓谷と滝が織りなす幻想的な風景、そして豊かな植生。それらは霧島を訪れる人々の心を魅了してきました。
山麓へ行けば、そこには旅の疲れを癒す日本屈指の温泉郷が広がります。温泉もまた、地下に豊かな水と熱いマグマを蓄える霧島の地形ならではの恩恵といえるでしょう。
霧島は、これらに関連して、謎めいた地という一面も持っています。
さあ、霧島の謎を解く旅へ出掛けましょう。
MYSTERY OF KIRISHIMA
日本の年間降水量の2TOPは鹿児島県と宮崎県!
※出典/ 総務省統計局 統計でみる都道府県のすがた2018
謎を解くカギは南風と地形に。
この地域では、特に夏季、南からの湿った風が山肌にふきつけます。湿った空気が霧島の急峻な山肌を上昇する時に気温が下がり、霧や雨雲が発生します。
高低差がある河床(川の地盤)も多いので、滝も多く見られます。
丸尾滝(鹿児島県霧島市)
高さ23m、幅16mの豪壮な滝。赤褐色の柱状節理※1と乳青色の滝壺を観察できます。
※1/溶岩が固まって冷える時に、体積が小さくなるためにできる規則的な割れ目のこと。
関之尾滝(宮崎県都城市)
日本の滝100 選の名瀑。凹凸のある岩の間を勢いよく水が下り、広大な滝壺に轟音とともに流れ込みます。高さ18m、幅40m。
関之尾滝甌穴群
上流には甌穴群が見られます。約34万年前の加久藤火砕流でできた溶結凝灰岩層で、霧島山からの川の流れが渦を巻くときに、小石が回転して地層に穴が空きました。
空から見ると、火山が密集しているのがよくわかります
謎を解くカギはマグマの発生位置に。
霧島の東側ではフィリピン海プレートがユーラシアプレートを押しながら沈み込んでいます(図1)。
海水を取り込んだフィリピン海プレートが沈み込むと、地表から約100Kmの深さで高温高圧状態になり、プレートから岩盤に水が供給されます。すると、岩石が溶けてマグマとなり、このマグマが地表に現れ、火山の噴火が起こります(図2)。さらにプレートの沈み込む角度もほぼ一定のため、プレート境界とほぼ平行に火山の列ができ、火山が密集するのです。韓国岳や高千穂峰の頂上から南に視線を向けると、姶良(あいら)カルデラ、桜島、開聞岳(かいもんだけ)といった火山を直線上に見ることができます。この火山列のことを「火山フロント」と呼びます。
謎を解くカギは地質の透水性に。
火口の地質の透水性が低いと、そこに地下水や雨水が貯えられ火口湖ができます。
口にできた水を通さない地層の深さによって火口湖の特徴もさまざまです。
例えば、白紫池(びゃくしいけ)は御池(みいけ)でも、湖水の深さは大きく異なります。また、韓国岳の火口には、雨の多い時期だけ水が溜まります。
御池(みいけ)
宮崎県都城市と高原町の境界にある霧島最大・最深の火口湖。直径約1㎞、水深93.5m
謎を解くカギは水と土の関係に。
美味しい焼酎には美味しい水が欠かせません。霧島山に降り注ぐ雨は長い時間をかけてシラス台地に浸透します。そのときに自然のろ過作用を受け、地下深くにまろやかで美味しい水がうまれるのです。
シラス台地は水はけが良いため米つくりには向きませんが、カライモ(サツマイモ)づくりには適しているため、南九州では芋焼酎が造られ、広く親しまれています。
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