土地を購入する際など、よく知らないままに汚染状況の調査が不要だと考える方もいることでしょう。しかし、調査をするメリットと調査をしないことで生じるリスクを知らずに判断してしまうと、後々のトラブルにつながりかねません。
そこで今回は、土壌汚染調査に関する法律と合わせて、調査が必要な理由や調査方法についてご紹介します。
土壌汚染対策法とは?
「土壌汚染対策法」は、土壌汚染の状況調査に関する手続きや方法、汚染区域の指定、汚染土壌の搬出ルールや除去対策などをまとめた法律で、国民の健康保護を目的としています。
「有害物質使用特定施設の廃止時」や「3000㎡以上の土地の形質変更時」などは土壌汚染調査が義務付けられており(義務調査)、環境大臣が指定した指定調査機関に依頼して調査・報告する必要があります。指定調査機関のリストは環境省のWebサイトから確認可能です。
義務調査の対象外だとしても、住民の健康被害に対するリスクや不安を解消するためには、土壌汚染調査(自主調査)が欠かせません。また、調査の結果、土壌の汚染状態が基準値を超過した際には、土壌汚染対策法を守った上で汚染の除去などを行う必要があります。
土壌汚染調査が必要な理由
自主的な土壌汚染調査が必要な理由には、以下のような点が挙げられます。
土壌汚染がなかったとしても、信頼度の向上により売買交渉が円滑になる
たとえ土壌汚染がなかったとしても、調査は無駄とは言えません。基準適合土壌だと公的に認められることにより、土地の売買交渉が円滑に行えます。調査が完了しているかどうかで土地の利用価値や安全性が大きく変わりますし、買い手に与える印象も良くなるでしょう。また、調査の実施は市場に向けた有効なアピールになり、適正価格での土地販売・賃貸につながります。
調査命令前の自主申請であれば融通がきく
義務調査の対象となる土壌の場合、調査命令前であれば自主的な申請が行えます。自主的な申請を行うことで、土壌汚染調査に関するスケジュールが自主的に管理できるようになるほか、土の仮置きスペースの確保など、現場での対策措置を円滑に行えるようになります。
調査を実施せず汚染状況が不明なままの売買は損害賠償請求のリスクも
仮に土壌汚染調査をせずに売買成立したとします。その後、買い手側が自主的に土壌調査を行って有害物質が確認されれば、その状況を認知していなかったとしても、売り主には瑕疵(かし)責任が問われます。場合によっては、契約が無効、全額返金、損害賠償請求もあるでしょう。お互いに安心・安全なかたちで売買契約を結ぶためにも、土壌汚染調査は必要なのです。
土壌汚染の調査方法
土壌汚染調査の必要性は理解していただけたでしょうか?続いては、調査方法について順を追ってご紹介します。
1. 地歴調査(特定有害物質の種類の特定、試料採取等を行う区画の選定)
まず、その土地の過去の使用状況を調べる地歴調査が行われます。登記簿や住宅地図などの書類調査、空中撮影、周辺住民への聞き取りなどの実地調査を行い、綿密に情報を収集。それらの調査に基づき、汚染のおそれがある区域の特定と、レベルごとの区画設定が行われます。
2. 試料採取・測定
地歴調査で特定した汚染のおそれがある区域から試料を採取し、特定有害物質を調査します。特定有害物質は大きく3つに分類され、種別ごとに行うべき調査が決められています。
第1種(揮発性有機化合物)
- 土壌ガス調査 ※地下水によって土壌ガスが採取できない場合は地下水調査
- 土壌溶出量調査 ※土壌ガス調査で特定有害物質が検出された場合
第2種(重金属など)
- 土壌溶出量調査・土壌含有量調査
第3種(農薬など)
- 土壌溶出量調査
「土壌汚染のおそれなし」と判定されれば、土壌の試料採取は行われません。試料採取の区画範囲で特定有害物質が検出された場合は、種別ごとに有害物質の濃度調査が実施されます。
3. 汚染範囲・深度の調査
汚染範囲を明確にするために、汚染が認められる区域と認められない区域を調査、確定します。汚染が認められる区域の分析は他の区域と切り分け、単独によるサンプル採取と分析を行い、ボーリング調査によって汚染の深度や地下水の汚染の有無も調査します。
おわりに
今回は、土壌汚染調査に関する法律と合わせて、調査が必要な理由や調査方法についてご紹介しました。
今は普通の住宅街でも、過去にどのような施設があり、どういった目的で使用されていたかは地歴を調べないと分かりません。産業廃棄物処理施設や工場の土地として使われていれば、土壌汚染の可能性が考えられます。
あとから土壌汚染が発覚することにメリットはありません。土地を売買する前に土壌汚染調査を実施することで、さまざまなリスクを回避することができます。安心して土地を扱うためにも、土壌汚染調査はしっかり行うようにしましょう。